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闘魂 サバイバル生活者のブログ

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科学という物語

●大竹文雄「競争と公平感」(中公新書)読了。

P159「しかし、そもそも非正規切りはけしからん」と企業を責め立てても、責められる企業も困ったはずだ。非正規社員を雇用の調節弁とすることを社会から認められている以上、この行動は企業にとって完全に合理的であるからだ…」、「格差の大きな社会と、中間層が厚い社会のどちらを選ぶかは価値判断の問題ではある…」。こういう物言いをするのは、科学主義の意匠を凝らしたイデオロギー、つまり、自分のよって立つ前提に無自覚か、無自覚のふりをしているのであって、不親切であり、公平感を欠いている。一事が万事この調子である。

あとがきに、スポーツの競争を市場での競争にたとえていた。選手は企業で、観客は消費者、政府はルールを決めるコミッショナーだという。一見悪くないたとえであるが、実は重大な落とし穴がある。それは、銀行や軍産複合体に対する位置づけがまったくなされていないということだ。

「経済の話は難しい。そう思ってしまう人も多いだろう。しかし、それは為政者によって都合よくつくられた罠だ。本当は、経済の話はおそろしく単純だ。銀行、とくに中央銀行が、マネー(お金)の量を増やすか減らすか、そのどちらしかない…経済学の教科書のような、複雑な計算式は不要なのだ。もし、複雑なものがあるとすれば、銀行家たちの政治的な判断である…」(吉田祐二「日銀円の王権」(学習研究社))。

吉田氏は、仮説が説得的などうか、政治的に、支配的なイデオロギーが決まるとする。そこには、科学主義も含まれてしまう。つまり、科学でさえ客観主義の産物であるとはいえないのであって、そういう文脈から言えば、たかが経済学くらい、客観性を装う必要などさらさらなく、それは山本義隆氏のような、科学の基本的概念でさえ錬金術や呪術から生まれ出たという指摘を待つまでもない。

さて、久しぶりに、晴耕雨読を読んで、改めて、「経済学的思考のセンス」に感じ入った。以下、引用する。コメントは、例によって、●印で挿入しておく。

(引用はじめ)

>高額所得者は所得税と住民税を合わせて65パーセントも税金を取られ、健康保険と国民年金も最高額で寄付金も最高額で相続税も最高額で手元に残るのはほんのわずかです。これ以上、税金を高くすれば自分の取り分がなくなってしまいます。彼らは何のために苦労しているのかわからなくなってしまいます。働くことが馬鹿らしくなってきます。これ以上、税金などが高くなったら外国への移住を考えるでしょう。日本は貧乏人しか住めない国になってしまう。

●ただちに去れといいたい。

こういう話は現実を知らないか、無視をしているメディアの評論をそのまま鵜呑みにしていることから出てきているのでしょうね。

●以下、晴耕雨読さんは、米国の例をあげて、累進課税の正当性を訴えるために、現状の問題点を投げかけるが、それは引用元「財政赤字の累積問題は、高額所得者への累進課税と切っても切れない関係にあるのです」を読んでいただきたい。

…そもそもマクロ経済学というものは単純な理論で、資金の循環を止めないようにするにはどうするべきかを考える学問であるからです。

累進課税が経済成長を押し上げ、逆進税がそれを悪化させるのはなぜでしょうか。

先進国の市場経済では、需要が生産活動の中心に位置するからです。

●健康保険や年金、雇用保険などの税以外の保険料の逆進性はすさまじい。おまけに、制度設計が社会で男ががむしゃらに働くかつての常識のままになっていて、年金など同じ主婦でもサラリーマンの主婦と自営業者の主婦で、保険料が違う、というか、フリーライダーを許すシステムになっている。私益を離れ、公のことを考えてものをいうとこうなる。別に米国の肩を持つわけではないが、IRSナンバーのような納税者番号の導入に躊躇するのはおかしいし、源泉徴収の制度だって少なくとも選択制にすべきだと思う。ベーシックインカムではないが、ベーシックインカム的な方向に、制度設計を根本的に見直すという手もある。

投資、収益、生産高、雇用、財政支出などすべての要素が全需要の2/3以上を占める消費者支出に左右されます。

雇用主が全てを支配する資本主義においては、米国の例でもわかるように、最上位の所得階層の所得上昇率は、最下層のそれを上回る傾向にあります。

しかし、高額所得者の所得に占める消費の割合は、貧困者に比べてはるかに少ないため、消費支出、すなわち需要はそれほど増加せずに、一般に、需要が生産増に追いつかない結果になります。

言い換えると、貧富の差が拡大しているがために、需要が供給に追いつかなくなってしまうのです。

その結果、生産を需要に合わせて引き下げなければならなくなり、当然、経済成長は鈍化してしまうのです。

どのような経済においても、資金の循環は必要不可欠なのです。

●ここを突いたのが、「エンデの遺言」である。すべてのものは、時間とともに価値が減価するのに、唯一カネだけは、最初の約定によって、利子を生む。よって、蓄財の手段となるし、食事や車と違って、満足というものと無縁で、無限の欲望をかきたてる。また、資本として、デジタル化されて、ロボットによって資本市場で取引される。結果、食料やインフラの原料などが先物で投機の影響を被ったりする。こういう考えもあるということは知っておいたほうがいい。

それを政府が赤字国債を発行して、わざわざ裕福者層に利息をはらって借りて、取り繕っているのが現在の日本経済の状態なのです。

全需要の2/3を占める一般消費者に課税をかけて、消費の能力をうばい、金持ちを優遇して、金持ちの貯蓄を増やし、さらに一般消費者が消費できなくなったがゆえに大きくなってしまった需給ギャップを穴埋めするために政府が赤字国債を発行して、かわりに消費し、ご丁寧にもその赤字国債を金持ちに買ってもらうことにより、金持ちに対して国が利息もはらっているというのが現実なのです。

これが金持ち優遇税制つまり逆進税をした結果なのです。こんな不健全な経済がいつまでも持つと思いますか…

●上げ潮だか、なんだか知らないが、国民は以上の議論をしっかりと認識した上で、消去法で民主党を選ぶしかない。ここを鳩山に期待するのは無理で、菅直人ならやれるかも知れない。

2010年4月25日 根賀源三


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